本の紹介です。
ひょうごの在来種保存会の方たちがまとめた
 https://web.pref.hyogo.lg.jp/ac02/yamane.html
兵庫県の在来の野菜を中心とした作物たちを紹介した本です。

 『つながっていく種と人 ひょうごの在来作物』
   ひょうごの在来種保存会・編著
   神戸新聞総合出版センター 2016年3月
   1600円+税


その土地とちで、永く作られているたべものがあります。
でもそれらがいまもあるのは、その場所で採れる種(たね)をずっと守り、
作り続けてきた人がいるからこそ。
この本には兵庫という場所でのそんな在来作物たちの歴史や
現在それらを作っている人や場所、作物の歴史を写真と文で紹介しています。

例えば、ドイツ瓜、オランダトマトというのは、
神戸っぽい感じがしませんか?
鳴尾いちご、武庫一寸そらまめなど、地域の名前が付いているものも。
(とくに兵庫の人は?)気になる名前の作物がたくさん出てきます。

たべたことのあるものより、この本ではじめて知ったもののほうが多いです。
あらためて兵庫にはいろんな野菜があるのだなあと感心します。
これを全国の視点でながめれば、
日本中には、どれほどの「地元の」たべものたちがあるのだろう~。

表紙も裏表紙も よく見て下さいね。




この本で語られているように、戦後、種の世界は
一代交配という技術が進んで、種は買う時代に。
その土地で採れた種を次の季節に撒くと言う循環が消えていきました。

それに加えて思うのは、
今のような日本のすみずみにまで流通のシステムが行き渡っている、
その前の時代は、閉じられた地域でつくられたたべものをたべていました。
地元でしかたべられない物は、それが「普通」「当たり前」だったと思います。

しかし現代は流通手段が発達したのと、都市人口が増えたせいで、
全国各地で作られたあらゆるたべものが、
日本中に運ばれ、売られているので、食卓にのぼるたべものは「全国区」になりました。
たとえばきゅうりは高知、レタスは長野、じゃがいもは北海道、みたいな。
さらに世界中のたべものもが冷蔵庫や食卓にあるんです。
食糧を作ると言う点では、こういった流通と食べ物の関係はとても大切なことだし、
それぞれの土地や気候にあったものが特産品となってつくられて、
全国に出ていくことは素晴らしいことだなあと思います。
けれど一方で、それだから、あたり前の地元の食べ物が
かえって珍しい、逆転の世の中になってしまいました。

その土地のたべものは、風土に合わせて生き延びてきた、ということだから、
土地の記憶と、生きてゆくための工夫や智慧がたっぷりつまっているはず。
それは人間にとってもそこで生きていくための大切な情報です。

だから来作物を知ることは、今いる場所を知ることなんだと思います。
土地の事はたべものが一番知っているはず。
つまり種って記憶のカプセルで、
種を採ることは、次の時代に土地の記憶やそこで生きるための智慧を伝えること。
そんなことじゃないかなあと。
きっとこれは方言にもつながることかも。

色々書きましたが、なにより短く言えば、
この本のページをめくるたび
地元のおいしいものたべてみたい! 在来種万歳、
と思えるのが楽しくなる、というのが一番の感想ってことです。

2016年6月6日毎日新聞でも紹介されました。


5月28日の神戸新聞でも
http://www.kobe-np.co.jp/news/kurashi/201605/0009127579.shtml

「ひょうごの在来種保存会」の代表の山根成人さんをはじめ、
筆者の中には以前、農と食のお仕事でお世話になった方のお名前もずらっと。
私にとっては「顔の見える本」でして、そんなこともうれしくて紹介させていただきました。