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2008年9月22日のイーハトーブのごちそうたち [宮沢賢治]

前回のつづき・・・
宮沢賢治学会第19回定期大会参加者交流・懇親会で並んだごちそうたちを紹介します。
看板.jpg 会場風景.jpg

○地ビール
岩手の地ビールが並びました。
ビールは、賢治さんの作品には比喩ででてきたり、
「紫紺染めについて」や、「山男の四月」の山男が飲んでいたりします。
光太郎さんは、ビールがお好きだったようで、
ビールを味わう光太郎さんのエピソードがいくつもあり、
そこには愉快な気持ちにで乾杯したり笑っている光太郎さんがいます。
地ビールいろいろ.jpg地ビールたち.jpg


○梅酒  ○りんごワイン  ○ポポー酒
どれも光太郎がくらしていた場所の近くの果樹園でとれた果実からつくられたものです。

梅酒は、智恵子抄「梅酒」にちなんで。

りんごワインは紅玉100%、2007年度エーデルワインでつくられました。
甘い香りがふわっとグラスから立ち上ります。

ポポーはあけびの仲間の果物。
現在でもめずらしいものですが、賢治の時代もそうであったようで、
大正5年3月、盛岡高等農林学校の修学旅行で訪れた京都の府立農事試験場桃山分場で
「ポーポーと云ふ珍しき木と、その果実を見た」そうです。

ポーポーもポポーも、おそらく同じ果実でしょう。
そのお酒は、じわっとあまさが舌に残る感じで、食前酒におすすめでした。
たまたま、その生産者のかたからのおすすめで出したものだったのですが、
今回、宮沢賢治賞奨励賞を受賞された浜垣誠司さんから
上記の賢治につながるエピソードを教えていただきました。
浜垣さんありがとうございました(記事をリンクさせていただきました)。
「山しなのたけのこばた」http://www.ihatov.cc/blog/archives/2007/07/post_480.htm

また、ポーポーついては9月29日の毎日新聞にもとりあげられていて、驚きました。

ポポーブーム到来か!?


○智恵子の泉の水
光太郎が暮らしていた場所は、現在、高村光太郎記念館になっていて
その敷地内に「智恵子の泉」という湧き水があります。
ここで汲んできました.jpg 高村山荘はこの建物の中.jpg
この水をわけていただきました。

○グリンジュース
賢治さんとも光太郎さんとも親交のあった、森荘已池さんのご家族から教えていただいたレレシピ。
光太郎が牛乳を外に出しておいて発酵させてヨーグルトをつくっているのをみたそうです。
そして荘已池さんも自家製ヨーグルト作りをはじめ、
そこにいろいろな緑黄色野菜とハーブをブレンドしたグリンジュースを考案し、
一日に2,3杯のんでいたということです。
ほのかに香るミントがさわやかでした。
ミントがアクセント.jpg


○ばけものタンシチュー
光太郎さんのエピソードでは「タンはシチューにしてすてきとされていますが、
牛の尻尾なんか肥料になってしまうのでしょう。」とされるタンシチュー。
この懇親会では過去2回タンシチューを「ばけもの」というごちそうにして出しました。
賢治の童話「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」にでてくる「ばけもの」のというごちそう。
物語の中で「もにゃもにゃッと切って、むにゃむにゃむにゃっとたべ」られているそのお料理をタンシチューで表現したのです。
むにゃむにゃ.jpg 中はこんなの.jpg


○天下一品のテールスープ
光太郎さんのエピソードに

「(略)フランスあたりでやる牛の尻尾の料理は大したものです」
(略)
「あの長いやつの皮をむいて関節のところでポツポツと切りはなし、
それをゆでて、一先ず中の水をすて、これをとろ火でゆっくり煮るのです。
それを塩とコショウなどで味をつけて食うんです。肉もついているし、髄はうまいです。
これのスープなどは天下一品です」
(『高村光太郎山居七年』昭和23年10月より)

というものがあり、
花巻での山居生活の日記の中には、スイトンもしばしば作って食べていた記録があります。
花巻でスイトンといえば、「ひっつみ」です。
今回は花巻名産の雑穀でつくったひっつみをテールスープで味わいました。
天下一品の味.jpg


○若鶏の丸煮とパン、そしてスコーレのジャム
昭和25年の光太郎さんが北上市のあるお宅に招待されたときのエピソードにちなんだ若鶏の丸煮。
そこには当時めずらしかったカリフラワーが周りに添えられていたそうです。
手作りパン、ちらしずし、すまし汁などとともに味わったそうです。
光太郎さんは、パンもお好きだったようです。
花巻での山居生活の日記の中には、そば粉でつくった蒸しパンがしばしば登場しています。
花巻周辺ではがんづきが作られますが、この蒸しパンもそれに似たものだったかもしれません。
若鶏の丸煮.jpg

賢治さんは、「グスコーブドリの伝記」「ペンネンネン・ネネムの伝記」にでてくる「ぶどうパン」「ばけものパン」「蒸しパン」など賢治さんの作品にはパンがよく登場します。
また、昭和23年創業の盛岡にあるパン屋さん「福田パン」の創始者・福田留吉さんは、花巻農業高校時代、賢治さんの教え子でした。

光太郎さんのエピソードには、昭和24年の暮れ「盛岡の生活学校」の女生徒たち約50人が、光太郎が同校の展示即売会に出席し、記念講演をしてくれたお礼にと、手作りの座布団をプレゼントしたというものがあります(『啄木・賢治・光太郎』高村先生に座ぶとんを)。
この学校は現在の盛岡スコーレ学園高校のこと。
盛岡、そしてパンというつながりで、今回は福田パンとスコーレのジャムをいただきました。

大きな福田パン.jpg


○小岩井のバターでキノコソテー
賢治さんのイーハトーブの森では、にぎやかな楽隊になったり、おいしい匂いをただよわせているキノコたち。
光太郎さんの日記には、秋になるとキノコ獲りのエピソードがいくつかでてきます。フランス料理でもキノコはよくたべられ、つけあわせにも欠かせないものですので、光太郎さんのキノコ好きも、もしかするとフランス留学の影響かもしれません。光太郎さんの日記には、バター代金の支払いについて記されている箇所が多いーガリンになっています)のです。その食卓にはバターが欠かせなかったことがわかります。お料理に使ったり、パンと一緒に味わっていたのでしょう。
キノコソテー.jpg


○お昼のじゃがいも
光太郎さんの日記には一日の食事が細かく記録されています。
9月の昼食はほぼ毎日ジャガイモ、その味わい方も毎日ちょっとずつ工夫しているところが、大したものだと思います。
今回は二種類のじゃがいもをシンプルに小岩井のバターでいただきました。
ほくほく.jpg


○フランス漬け
畑ではキャベツが超特級によく出来、近く漬けこみます。
パリ直伝のシュウクルウト式のつけものも作ります。
今年はパセリもたくさんあり、月桂樹の葉もありますから香気のいいのが出来るでせう。
白菜も大根も葱も今育ちざかりです。
ハウレン草も本葉二三枚といふところ、辛子菜、山東菜も来春の準備に今出そろつています。
(『高村光太郎全集21』昭和24年10月26日書簡2927より)

光太郎さん考案のフランス漬け。
シュークルートは元々は「すっぱいキャベツ」という意味のドイツ料理・ザウアークラウト。千切りにしたキャベツを塩漬けにして自然発酵させた保存食です。
これを応用した「花巻風」フランス漬け。しゃれていますね。
フランス漬け.jpg


○花巻のおいしい雑穀ごはん
花巻はおいしいお米がとれるところでもあります。
9月のこの時期、花巻の田んぼは、どこもかしこも秋の実りで黄金色に輝いています。

○雑穀ドレッシングでサラダ
花巻でとれたアマランサスをドレッシングにいれてサラダに添えました。
アマランサスは茹でるとプチプチして数の子の粒々のような食感と色をしています。
アマランサスドレッシング.jpg


○白金豚のお料理
花巻産のブランド豚「白金豚」(プラチナポークともよばれています)。
その名前の由来は賢治さんの童話「フランドン農学校の豚」からきているということです。
今回はしゃぶしゃぶと、ベーコンでいただきました。
会場でベーコンを軽くいためてもらい、
これと「小岩井のバターでキノコソテー」「フランス漬け」を
福田パンにはさんだらイーハトーブサンド」のできあがり! 

○花巻バーガー
地産地消をテーマに花巻の食品業者のみなさんが集結して今年8月に発売されたバーガーです。
お肉ではなく「おからこんにゃく」をつかっているところがユニーク。
バンズ(パン)のトッピングの部分も花巻産のヒエをつかっているほど細かいところまでこだわっています。
花巻バーガー.jpg

普段でも花巻の石釜パン工房ミッシェルで販売されています。
こういう商品もっと増えるといいですね。
ミッシェル.jpg 地産地消バーガー.jpg

○いものこ汁
秋の収穫を味わえる、いものこ汁。
里芋をはじめ野菜たっぷりです。
いものこ汁.jpg


○栗とブドウ
栗はイーハトーブ館の裏でひろってきたもの。
本当にびっくりするくらい大粒です。
ブドウは大迫の早池峰賢治の会より差し入れていただきました。
くりくり.jpg

美味しいものを囲んで、語りあい、歌ったりでいる時間は、本当にかけがえのないものです。
どのお料理も、花巻や岩手で丹精を込めて作られた食材をふんだんにつかい、
味わうことが出来る背景には、花巻や岩手の食の豊かさと生産者の方のおかげだなあと感謝で一杯になります。
そしてお料理をつくり、おいしい演出にも応えていただいた
北上パークホテルのみなさま、
メニューのアイデアを下さったみなさま、
そして当日おいしく味わってくださった当日の参加者のみなさま
本当にたくさんの方たちのおかげで、おいしい時間はできあがっているのです。
どうもありがとうございました。


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